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4−15 昔も、今も

last update آخر تحديث: 2025-11-15 16:44:20

「ジェニファー。花、こんなものでいいか?」

両手いっぱいのポピーの花を摘んだダンが声をかけてきた。

「まぁ、ダン。すごいわ、そんなに花を摘んでくれたのね。ありがとう。これだけあれば十分ね。それじゃ早速持って帰るわ。ダン、花をちょうだい」

「何言ってるんだ。こんなに沢山の花、1人で持って帰れるはず無いだろう? 俺が持っていくよ」

「そんな悪いわ。ダンはこれから仕事でしょう。花なら一人で持って帰れるわよ。だって花を包む為のクロスをちゃんと用意してきたのだから」

ジェニファーはスカートのポケットからチェックのクロスを取り出した。

「なら花を包んだクロスは俺が預かるよ」

「ダン、私なら本当に大丈夫だから……」

「いいからクロスを広げてくれよ」

「分かったわ」

クロスを広げると、2人は摘んだ花を包みやすいように積み重ねていく。

その様子をシドは遠くから眺めていた。

「あの花……一体どうするつもりなんだろう?」

その時。

背後から誰かが近づいてくる気配に感じたシドは素早く振り向き……目を見開いた。

「え? ニコラス様? 何故ここに?」

「ジェニファーが何処へ行くか気になったから、後をつけてきたんだが……まさか、あの別荘の場所を知っていとは思わなかった。おそらくジェニーが教えていたのだろうな。それにしても、彼女もあの野花が好きだったのか。本当に良く似た2人だ」

ニコラスの言葉をシドは呆然と聞いていた。

(何故だ……? ニコラス様は何故15年前会っていた少女が実はジェニファー様だったとは思えないのだ?)

「ニコラス様……実は……ジェニファー様は……」

つい、口止めされていた秘密を洩らしそうになったそのとき。

「シド、帰るぞ」

ニコラスが背を向けて歩き出し、我に返った。

「え? ニコラス様、もうよろしいのですか?」

「ああ。シド、お前も帰るんだ。あの分だと、きっとジェニファーは彼に城まで見送ってもらうに決まっている。1人で町を歩くことはないだろう」

「……そうですね。分かりました」

シドはニコラスにおとなしく従い、城に戻ることにした。

本来であればジェニファーの護衛として最後まで2人の後をついていこうと思っていたのだが、ダンと親しくしている姿を見るのも気分が良くなかったのだ。

「シド」

不意に隣を歩くニコラスが話しかけてきた。

「はい、何でしょうか?」

「あの2人、随分楽しそうにし
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  • 望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした   6-19 夕食の席 

    ――17時執事長のカルロスがジェニファーの部屋を訪ねてきた。傍にはココが控えている。「ジェニファー様、お身体の具合はいかがですか?」ソファに座っていたジェニファーは笑顔で返事をした。「はい。ゆっくり休ませていただいたお陰で良くなりました。お城の皆様には感謝の気持ちで一杯です」「いえ、ジェニファー様のお世話をするのは当然のことですから。では今夜の夕食はニコラス様と御一緒でもよろしいでしょうか?」その言葉にジェニファーは驚いた。「え? 私とですか? ニコラス様がおっしゃったのでしょうか?」「ええ、勿論です。では18時半になりましたら、お迎えに参ります」カルロスが部屋を去ると、ココがジェニファーに話しかけてきた。「ジェニファー様。ニコラス様とお食事なら、お着換えいたしましょう!」「え? 着替え……そうね」ジェニファーは白いブラウスにブラウンのロングスカートという、いつもの普段着姿だった。(そうね……ニコラスの前で、あまり失礼な格好はしてはいけないわね)「分かったわ。それなら着替えることにするわ」幸いクローゼットの中には、『ボニート』へ来る前に購入した服が入っている。「ではお手伝いさせて下さい!」こうしてジェニファーはココの助けを借りて着替えを始めた――****――18時半一足早く、ダイニングルームでニコラスはジェニファーが来るのを待っていた。ジェニファーとの食事は今回で2度目だが、前回とは訳が違う。何しろ今回はジェニファーが実は、あの時のジェニーだったことが発覚して初めて共にする食事だったからだ。(前回は冷たい態度で接してしまったからな……)そんなことを考えていた時。「ニコラス様、ジェニファー様をお連れいたしました」執事長が車いすに乗ったジェニファーを連れてダイニングルームに現れた。「あぁ、御苦労……!」車椅子に乗ったジェニファーはネイビーカラーのスリーピースドレスを着ていた。その有様は、生前のジェニーを彷彿させる。思わず途中で言葉を失うニコラス。執事長はジェニファーをテーブルの前まで車椅子を押して連れて来た。「ありがとうございます」「いえ、それでは失礼いたします」ジェニファーが執事長に礼を述べると、彼はニコリと笑みを浮かべて去っていった。「あの、ニコラス様。わざわざ車椅子まで用意して頂き、ありがとう

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    「電話って……一体、何のために?」尋ねるジェニファーの声が震える。「申し訳ございません。詳しくは聞いていないのですが、恐らく誤解を解く為かと思います」「誤解を解く?」何のことか分からなかった。「それは恐らくフォルクマン伯爵がジェニファー様に抱いている負の感情のことだと思います」するとポツリとジェニファーがポツリと本音を口にした。「別に誤解では無いのに。理由はどうあれ、あの日ジェニーの具合が悪いのを分かっていて、町に遊びに行ったのは事実なのだから」「ですが、それこそが誤解ではありませんか。ジェニファー様が町に行かれたのはジェニー様から命令されたからですよね? ジェニファー様が拒否したにも関わらず、自分の立場が上なのをいいことに、命令したようなものです!」「シド……」いつになく、強い口調のシドにジェニファーは言葉を無くす。「! あ……も、申し訳ありません。つい、大声を出してしまいました。驚かれましたよね……? もしかして怖がらせてしまいましたか?」伏し目がちに尋ねるシド。ジェニファーにだけは、どうしても自分のことを恐れられたくは無かった。「少しは驚いたけど別に怖くは無いわ。だって子供の頃からシドは優しい人だって知っているから」「ありがとうございます。そろそろ城の見張りの交代時間なので、失礼します」赤くなった顔を見られない為に部屋を出て行こうと踵を返したとき、ジェニファーが呼び止めた。「待って、シド」「な、何か?」「前から聞きたかったのだけど……、何故こんなに厳重に城の警備をしているの?」「それは……ニコラス様を暗殺の危機から守る為です」「え!? だってそれは子供の頃の話でしょう? 今はニコラスが当主になったからその心配は無くなったのでは無かったの?」ジェニファーの顔が青ざめる。「そうなのですが……現状は警備を怠ってはいけない状況です」「そんな……。それじゃ、ジェニーと結婚している時もニコラスは暗殺の危機に置かれていたの?」「それは少し違います。あの時は、そのような状況ではありませんでした」「どうして?」「フォルクマン伯爵という後ろ盾があったからです。あの方は伯爵家の中でも名門でした。鉱山を所有している為、かなり資産家で権力をお持ちの方だったのです。その娘であるジェニー様と婚姻されていた時は平穏なものでした」「そう…

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  • 望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした   6-16 シドの不吉な予感

    —―パタンジョナサンを抱いてニコラスが部屋から出てくると、廊下で待っていたシドとポリーがすぐに尋ねてきた。「ニコラス様、ジェニファー様の容態はどうなのですか? 先生はもう大丈夫だと話していましたが……」「教えてください、旦那様」そこでニコラスは2人を見渡した。「ジェニファーなら、もう大丈夫だと思う。弱々しいが話をすることはできる。ただまだベッドから起き上がることは難しい。だからもう暫くは『ボニート』に滞在し、ジョナサンの世話は父親である俺がする。尤も全ての世話は無理だと思うが」」「そうなのですか? ジョナサン様のお世話なら私がいたしますが?」ポリーの言葉に、ニコラスは首を振る。「いや、ポリーにはジェニファーを見てみらいたい。当分不自由な状態が続くと思う。今の彼女には手助けが必要だからな」「はい、分かりました」するとシドが話しかけてきた。「あの……ニコラス様」「何だ?」「暫くはここに滞在すると仰りましたが、どの位でしょうか? そんなに侯爵邸を離れても大丈夫なのでしょうか? パトリック様とイザベラ様に知られでもすれば、よからぬことを企んだりはしないでしょうか?」「……あの2人か」ニコラスの顔が険しくなる。「そうです。あの方々はニコラス様が当主になられても、まだその座を狙っていると言う噂もあります。ずっと不在にしていれば、付け入られるのではありませんか?」「だが、あの2人の息がかかった使用人は全員解雇にした。新しく執事長になったライオネルが何とかしてくれるだろう。連絡も定期的にとってはいるが、今の所あの2人に大きな動きは無いようだ。引き続き、注意は怠らないようにしておく。それよりも今俺が優先するべきことはジェニファーだ」「ニコラス様……」シドは真剣なニコラスの横顔を見つめる。(ニコラス様……もしかして、ジェニファー様のことを……?)「シド。お前にもジェニファーのことを頼む」「え? 俺にですか?」「ああ。俺はジョナサンの世話があるからな。……ジョナサンには可哀想なことをしてしまうもかもしれないが、ジェニファーのいない生活にも慣れさせないとな」「え……?」ニコラスの話にシドは息を飲むが、ポリーは普通に対応する。「確かにそうですね。ジェニファー様にはゆっくり休んで、早くお身体を治して頂かなければなりませんから」「その通りだ

  • 望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした   6-15 ニコラスとジェニファーの願い

    「昔のように……って……?」ジェニファーの大きな緑の瞳が見開かれた。その瞳を見た時、ニコラスの過去の記憶が僅かに蘇る。「あぁ……そうだった。あの時俺は君の目を見た時、宝石のように綺麗な瞳だと思ったんだった……」「まさか……記憶が……?」「全て戻ったわけじゃないが、ジェニーからの手紙を読んだ」「え……? でも……あれはジェニーが私に宛てたもので……」ジェニファーの様子に、ニコラスは慌てて弁明する。「い、いや。待ってくれ。ジェニファーが持ち帰った手紙の中に、ジェニーが俺宛てに書いた手紙があったんだ。そこに全て書いてあった。ジェニファー、君があの時のジェニーだったのだろう?」「ニコラス……様……」ジェニファーはニコラスの話を信じられない思いで聞いていた。こんなに穏やかな口調で自分に話しかけてくるニコラスは再会して初めてのことだった。ジェニファーは自分があの時の少女だったと告げる気は一切無かった。子供の頃、一緒に過ごした美しい思い出はジェニーに全てあげようと思っていたのだ。(もう知られているのなら……今更隠してもしようが無いわね……)そこで正直に言うことにした。「そう……です。私が……あのときのジェニーです……」「!」ニコラスは小さく息を吐くと、静かに尋ねた。「どうして、黙っていたんだ? いや……違うな。俺がジェニファーに真実を告げる機会を与えなかったからだろう? 今更謝って済む問題では無いが……俺は最低な男だった。本当に申し訳ない」そして頭を下げた。「いいえ……謝らないで……ください。元はと言えば……出会った時にジェニーの名前を名乗ったのは私なのですから……それにテイラー侯爵家へ来た時から……本当のことを告げるつもりは……無かったので……」「何故だ? どうして黙っていようと思ったんだ?」そこがニコラスは知りたくてたまらなかった。「それは……2人の結婚生活の思い出を……壊したくなかったことと……ニコラス様には過去の私では無く……今のジェニファーとしての私を……見てもらいたかったからです……」その言葉にニコラスは息を飲んだ。(そうだったのか。だからジェニファーは本当のことを言わなかったのか。なのに俺は伯爵からの話を鵜呑みにし、ジェニーがうわ言で謝る姿を見て勝手に思い込みをしてしまっていたのだ。先入観でジェニファーを見ていたばか

  • 望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした   6-14 目覚めた後 3

    「……ッ!」扉を開けてベッドの上で横たわるジェニファーを見た時、ニコラスは心臓が止まりそうになるほど驚いた。何故ならその姿は、病に伏せっていたジェニーに瓜二つだったからだ。(ジェニー……ッ!)自分の中で訳の分からない感情が込み上げてくる。ニコラスは込み上げる感情を無理やりに押し込めると、ジェニファーのベッドに近付き、声をかけた。「ジェニファー。俺を呼んだそうだな?」「……はい、ニコラス様……お越しいただき…‥ありがとうございます……。横になったままで……失礼をどうか……お許しください……」弱々しく、謝罪の言葉を述べるジェニファー。その言葉を聞いただけで、ニコラスの胸が熱くなる。(死にかけたばかりだというのに、こんなことを気にするなんて……! いや、そんな気持ちにさせたのは他でも無い……俺自身なのだ)そこでなるべくニコラスは優しい声をかけた。「そんなことは一切気にしないでいい。それより俺に何か用があったのだろう?」「はい……謝罪とお願いがあります……。まずは先に謝罪……させて下さい」「謝罪? 一体何の謝罪だ?」「それは……ニコラス様にご迷惑をかけてしまったこと……です。私が……ジョナサン様を……連れ出さなければ、危ない目に……遭うことがありませんでした……もし、風邪を引かせてしまっていたら……私はシッター失格……です……」—―シッター失格。その言葉はニコラスの心を深く抉った。本当はジェニファーを妻に迎えたはずだったのに、自分の負の感情を抑えきれずにシッター扱いをしてしまったのは確かだ。今更ながら、自分の取った行動を激しく後悔していた。「ジョナサンは怪我だってしていないし、風邪もひいていない。それは全て君が身を挺してジョナサンを庇ってくれたおかげだ。むしろ感謝している。逆に謝罪するべきは俺の方だ。そのせいで……命の危機に陥ってしまったのだから。……本当に、申し訳なかった」「そのことですが……お礼を言わせて下さい……」「お礼? 一体何に対してのだ?」「私のような者の為に……お医者様を呼んで下さった……ことです」医者に診てもらうということが、どれだけお金がかかることかジェニファーは良く知っていた。ジェニファーの叔父——アンの夫は、病気でこの世を去ってしまった。死因は風邪をこじらせてしまったことだった。貧しさのあまり、医者にか

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